デザインの見方

アイデアの「その先」にある表現

  • 田中 元

蜘蛛の巣/Laforet Grand Bazar(1994)

大貫卓也さんが手がけた、クモの巣をモチーフにした1994年の「ラフォーレ グランバザール」のポスターを見るたび、新人研修の思い出がよみがえります。それはアイデアをひたすら出し続けるトレーニングで、ひとつの課題に対して百案。百ページのスケッチブックを各自用意して、一ページ目から最後のページまで、アイデアを描き込んでいきました。

その課題のひとつに“「ラフォーレ グランバザール」の広告を考える”というものがありました。今でもそのときのスケッチブックが残っているのですが、百案の中に私もクモの巣をモチーフにしたアイデアを出していたんです。その1年後、原宿駅で大貫さんがデザインされた「ラフォーレ グランバザール」のクモの巣のポスターを見たとき、自分のアイデアがよみがえってきました。私のアイデアは、クモを中心にクモの巣を描いたものでした。一方、大貫さんのデザインは、クモの巣のみ。当然のことですが、同じモチーフでも、これほど違った印象になるのだと衝撃を受けました。

当時、原宿駅にはホームと表参道口改札をつなぐ渡り廊下のような通路があり、その両側の腰壁にポスターが連続で貼られていました。間近で見ることができたので、印刷の質感も覚えています。マジックで描いたようなポップなクモの巣の線は、一般的な黒よりも力強い黒で、もこっとした厚みもあった。シルクスクリーンのような特殊印刷だったと思います。シンプルだけどインパクトがあり、その完成度の高さに...

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