アベノミクスの影響もあり、好調な業績が伝えられるファミリーレストラン業界。その一方で、店舗数の増加や、業態の垣根を超えたサービス合戦により、競争はますます激しくなっている。従来から活用されているクーポン施策のほか、「その店でしかできない体験や魅力」を発信することで話題喚起を図るなど、各社が来店誘引に工夫を凝らしている。(取材・文 前田はるみ)
サービス特長を具現化した施策で
ブランドイメージの浸透を図る
ポスター

野菜を480g使った「野菜たっぷりちゃんぽん」(左)と、あっさりした塩味のスープで仕上げた「朝のちゃんぽん」(右)。
長崎ちゃんぽんを提供するリンガーハットでは、09年より順次、野菜7種類や麺に使う小麦などの食材をすべて国産に切り替えた。同時に、厚生労働省が推奨する1日当たりの野菜摂取量350gを超える、480gの国産野菜を使った「野菜たっぷりちゃんぽん」を発売。「リンガーハット=国産野菜」を打ち出し、「安心で安全な野菜をおいしく食べられる店」としてのメッセージ訴求を強化している。
野菜に関する取り組みを消費者により分かりやすく具現化した施策が、昨年10月から始めた「野菜の日キャンペーン」。毎月第4日曜日を「野菜の日」と定め、野菜たっぷりちゃんぽんを含む当日限定のセットメニューを提供。野菜の日には、野菜たっぷりちゃんぽんの販売は通常の2.5倍、客数は1.2倍に増えるという。
「記録的な寒波や大雪による野菜価格の高騰で、野菜への関心が強まっていることは当社にとって追い風」とリンガーハットマーケティング部執行役員の川内辰雄氏は話す。今年2月、野菜の日の特別企画として、国産野菜とリンガーハット全店で使える食事券1000円分などが入った「国産野菜のお得袋」(税込1000円)を発売したところ、1週間で1店舗当たり、予想を上回る約70個を販売した。
同社が行った調査によると、同社が国産野菜を使用していることを知る人は、来店客の7割。国産野菜を切り口としたコミュニケーションにより、目指すブランドイメージの浸透が進みつつあると言える。4月1日からは、消費税率変更に伴う店内ツールの改訂に合わせて、国産の表示をより分かりやすくし、さらなる認知度の向上につなげたい考えだ。川内氏はさらに、「お客さまに満足いただけるサービスを提供することで、周りの人へと口コミで伝播してもらうのが、私たちが最終的に目指すところです」と話す。
店内POP

好調に集客に結びついている「野菜の日キャンペーン」。
ランチョンマット

国産野菜を詰め合わせたお得袋には、リンガーハット自慢のドレッシングもついている。