2015年は北陸新幹線の開業や、成田空港のLCC専用ターミナルオープンなどの話題で盛り上がりを見せた交通サービス業界。サービス利用におけるIT活用も進み、利用者にとっての選択肢や利便性も高まっている。そのような中で、より多くの人に自社のサービスを知ってもらい、利用してもらうための取り組みを取材した。


企業タイアップで演出する、“乗って楽しい”タクシー
●日本交通/P&Gのクルマ用ファブリーズとタイアップした、クサくないタクシー「ファブタク」。一部車内では商品パンフレットを設置した。
長距離の移動サービスがより短時間で、アクセスもよく、手頃な価格で利用できるようになり、身近な存在になってきている。一方で、交通サービス間での競争も激しくなっている。選ばれるサービスになるためにはどうすればいいのか。今回は、海外旅行の概念を変えたLCC、乗車体験の価値を高めることで乗りたいバスを目指す高速バス、アプリの活用で利便性を追求するタクシー、魅力ある目的地の提案で移動需要を生み出した鉄道を取材した。
配車アプリで乗車体験を高め“乗りたくなる”タクシーを目指す
日本交通

配車アプリから呼べる。
路上で「拾う」タクシーから、スマホアプリで「呼ぶ」タクシーへ―。日本交通は2011年、スマホの位置情報を使ってタクシーを呼べる「日本交通タクシー配車アプリ」を他社に先駆けて導入した。アプリは改良を繰り返し、現在は決済機能も備える。全国2万4000台以上の提携タクシーに対応した姉妹アプリ「全国タクシー」との累計で、ダウンロード数は180万件以上、アプリ経由の売り上げは85億円(2015年10月現在)を超える。
配車アプリの活用により、「タクシーを探す」「料金を払う」場面での利便性向上はもちろん、「乗車中」も利用者属性に合わせた広告動画の配信や、視聴に応じた次回以降の乗車クーポン付与などで、乗車体験の向上とリピート利用の動機づけを狙う。「タクシーを広告媒体化することで乗車体験の価値を高め、選ばれるタクシーを目指していきます」と話すのは、日本交通 事業開発部長兼無線センターセンター長の濱 暢宏氏。昨年4月と9月には動画視聴クーポンの実証実験を行い、現在は検証結果を踏まえサービスの本格開始に向けた準備を進めている。
12月からは、タクシーの広告媒体化をさらに発展させ、乗車体験のエンタメ化とも言える新たな取り組みである「コンセプトタクシー」を始めている。
第一弾として、P&Gの車専用消臭芳香剤、クルマ用ファブリーズと共同で、車内を消臭したタクシー「ファブタク」を呼べるサービスを忘年会シーズンに合わせて実施した。乗客がファブタクを選別できるよう車両にステッカーを貼ったほか、乗車クーポンを付与するツイッターキャンペーン、一部の車内では商品サンプリングやパンフレットの設置も行った。
「タクシー車内の臭いを気にして敬遠していた人に、改めてタクシー利用を選択肢に加えてもらえるよう企画しました。アプリでファブタクを選べるようにしたところ、ファブタクを選ぶ人が予想以上に多く、休眠客の掘り起こしにつながったのではと思います」とプロモーションを担当する金 高恩氏は話す。
第二弾として、大塚製薬「ポカリスエット」と組んだサービスを実施している。車内での商品サンプリング、広告動画の配信を通じ「お酒を飲んだ後にポカリスエット」というメッセージを訴求する。
「タクシーはバスや電車などに比べて割高な印象が強いのですが …