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広報担当者の事件簿

若手社員がパワハラ自殺、広報課長が役員会議で発した一言とは?

    ゲーム会社若手社員、パワハラと過労を苦に自殺<後編>

    【あらすじ】
    ゲーム開発会社ファルコンの若手社員が、上司による執拗なパワハラを受け自殺に追い込まれたこと、その事実を隠そうとしていたことが週刊誌報道で明らかになった。社会の非難の目にさらされる中、広報課長の瀬戸真二は、記者からのある言葉をきっかけに、社内にまん延する「事なかれ主義」に立ち向かう決意をする。

    社長会見

    地下鉄大手町駅からファルコン本社のビルまでは地下道でつながっている。無機質なコンクリートで覆われたこの通路が永遠に続いていてほしかった。黒装束にも見えるスーツに身を包んだ人々の背中が、漆黒の海に向かって波が引く様を連想させる。この中にも、無理難題を突き付けられ、思うようにならない自分の人生に悩んでいる者もいるのだろうかとつい考えてしまう。

    昨日までの喧騒が嘘のようだった。本社ビルの前に陣取っていたテレビカメラやリポーターの姿はもうない。昨夜、ようやく社長の鶴見春彦による記者会見が行われ、その席で鶴見は亡くなった京谷駿次と遺族に対しまず謝罪した。書類送検されることになった会社の改革についても説明を行った。労働基準法を超える時間外労働が原因の労災認定に焦点が向きがちだったが、週刊潮流の記事で「パワハラ」による自殺だったことが公になった。

    京谷の母親は、どんな思いで記者会見を見ただろうか。

    =ファルコン 社内パワハラを組織で隠蔽=
    ~社員の自殺原因を複数社員が証言~

    地下鉄の車内で目にした週刊潮流の記事には、触れられたくなかった会社の闇の部分が炙り出されていた。

    本社のあるビルの前に今日もマスコミが集まっている。週刊潮流が掲載した記事は、これまでのファルコンのイメージを崩壊させるだけの力があった。この1週間、ファルコン関係者の“言質”を取ろうと本社ビルにはマスコミの波が押し寄せていた。

    株主や顧客からの電話も鳴りやまない。社内では連日、社長の鶴見をはじめとした役員の面々が最上階にある役員会議室で顔を突き合わせている。だが、いまだに対応方針を決められないでいる。株価は記事が出た翌日400円以上下落し、一週間で750円値を下げていた。今日も朝から50円ほど下落して始まった株値は、午前が終了した時点で1500円前後で推移している。

    記事にさらされてからというもの、SNSではファルコンに対する非難、氏名は出ていないが京谷を追い詰めた上司の小枝雄作に対する誹謗中傷が繰り返されている。広報課長の瀬戸真二は昨日、事の真意を聞きに小枝のもとに足を運んでいた。「奴が自殺したのが俺のせいなのか?冗談じゃない。俺は会社の命令に従って忠実に業務をこなしただけだ」と自席の小枝はにべもなかった。

    「部下を死なせることが会社の命令か?あんた、それでも人間か。そうやって、今まで何人を追い詰めてきたんだ!」と瀬戸が声を荒らげる。周囲の者は全員うつむき、時が過ぎるのをじっと待っているようだ。

    「社員を追い詰めろと会社が命令したのかよ。そんな命令、誰が出すんだ。欲求の捌け口に部下を的にしただけだろ……ふざけるな!」と瀬戸が啖呵を切ったが、次の瞬間、「広報は事実を正確に世の中に伝えることが仕事なんだ。あんたが今、俺に言った言葉はしっかり覚えておくぞ」と瀬戸は小枝の耳元に顔を寄せて、ポケットに忍ばせておいたICレコーダーを指で摘みあげながら小枝に見せる。「お、お前。それ……どうする気だ」小枝の顔がみるみる蒼白になっていく。瀬戸は「さあ」と言い口角を上げながら …

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