理念 転換期を乗り越えるコミュニケーション

企業DNAを「コマツウェイ」で継承 社員の実態に沿う「事例」が浸透の要

  • 浦野邦子氏(小松製作所)

企業の成長の中で築かれてきた信念や、それを実行に移す行動様式を、いかに継承、浸透させていくか。多様な背景を持つ社員が集まるグローバル企業では、どのような仕組みを作っているのか。

本原稿は、社会情報大学院大学 オンライン公開講座の内容をもとに構成しています。


小松製作所(コマツ)

広報体制:本社のコーポレート広報の部門は、宣伝担当も含め13人(女子柔道部員含む)。海外主要拠点に、マーケティングPRを行うメンバーが在籍。

2021年に100周年を迎える建設機械メーカー、小松製作所(コマツ)。連結従業員約6万3千人のうち68%が外国籍だ。世界に生産・販売の拠点を持ち、生産と開発機能が一体となった「マザー工場」で商品開発を行いながら、生産は需要地で行う体制をとる。オペレーションを現地化し、現地法人トップは日本人から外国籍社員へシフト。現在、現地トップの世代交代がなされる段階に入っている。

文化や習慣の異なる多様な社員が集うコマツで、すべての社員が継承すべき価値観として定着を図るのが「コマツウェイ」だ。経営の基本(「品質と信頼性」を追求し、社会を含むすべてのステークホルダーからの信頼度の総和を最大化する)を支える、価値観、心構え、行動様式を明文化したものだ。コマツウェイを作った経緯を取締役常務執行役員の浦野邦子氏はこう話す。

「60~70年代は、日本進出した競合に対抗するためQC(品質管理)活動を徹底した時代。その後、海外生産を拡大、事業を多角化した80~90年代を経て、2001年に初の営業赤字を出します。社内にはQCが全てではないと敬遠する風潮があり、ちょうど日本人社員が5割を切るタイミングでした。危機感を持った当時のトップが、先人たちが築き上げたコマツの強みを、後世に伝えグローバルでも守り続けたい、と考えコマツウェイを作りました」。

創業者・竹内明太郎氏が掲げた理念「品質第一」「技術革新」「海外への雄飛」「人材育成」を土台に、行動様式に落とし込んだコマツウェイ。「ダントツを狙おう」「ナゼナゼを5回繰り返そう」といった「語録」とそこに紐づく「事例」を項目ごとに掲載している。

コマツウェイの構成と実践

コマツウェイには、❶マネジメント/リーダーシップ編、❷“ものづくり”編、❸ブランドマネジメント編がある。

❶では、トップが重視すべき現場密着や人材育成などの心構えのほか「全ステークホルダーとのコミュニケーションを率先垂範」といった行動指針を記載する。「トップがステークホルダーのもとへ出向いて直接コミュニケーションを取り続けるのは負荷が高いことですが、本社や各工場での社員ミーティング、協力会社との懇談会、国内外の販売代理店との会議など、昨年度は100回を超える(メディア対応を除く)対話の機会を設けています」(浦野氏)。

❷“ものづくり”編では...

この記事の続きを読むには定期購読にご登録ください

月額

1,000

円で約

3,000

記事が読み放題!

この記事が含まれる特集

理念 転換期を乗り越えるコミュニケーション

先が読めない不確実な経済状況の中で、ビジネスモデルの再構築を迫られている企業もあります。そうした転換期に、従業員の心をひとつにする拠りどころとなるのが、企業理念です。社会から本当に必要とされているのか。何のために存在するのか。企業の存在意義を定めた理念が、組織の隅々まで行き渡るようにするために、広報担当者はどんなことができるのでしょうか。