2021年 コロナ下の危機対応 実例と応用

記者会見中に露呈した「認識の甘さ」 迅速な対応には平常時からの準備が重要

  • 田中正博(田中危機管理広報事務所 代表取締役社長)

問題の経緯

2020年9月13日

沖縄タイムス社は9月13日までに総務局付の40代男性社員が関連会社に出向中、国の持続化給付金100万円を不正受給の上、コロナ対策関連の80万円も不正に借り入れていたと発表した。同社の武富和彦社長は同日、「心よりおわび申し上げる」と謝罪。男性社員は懲戒解雇の他、男性の出向先である関連会社の30代男性社員も不正にかかわったとして懲戒解雇処分となった。さらに、経営責任として同社取締役の報酬カットを発表した。

沖縄タイムス コロナ給付金不正受給問題の経緯

世間の評価(アンケートから)

●会見を見たが事後の社内調査や結果について不明瞭(65歳男性)
●無知を強調して被害者のような態度(48歳女性)
●他の給付金不正について報じていたのに事件についてしれっと公表して波風立たない程度の少ない内容で謝罪を済まして自己解決をしている点。批判しておいて何だろうと思った(30歳男性)
●職(ジャーナリスト)に対する自負が薄いと思った(45歳女性)

メディアからの書かれ方

●持続化給付金詐取 SNSで受給を募った「ビジネスマン」の正体(2020年10月3日、NEWSポストセブン)
●沖縄タイムス「深くおわび」給付金不正受給で社員を懲戒解雇(2020年10月8日、毎日新聞見出し)

企業不祥事の緊急記者会見で問われるのは、事の重大性に対する登壇者側の「見識」と「認識」である。だが開口一番、社長の口から出た言葉は「記者会見にお集まりいただき、本当にありがとうございました」であった。この場は披露宴ではない。前代未聞の重大な不祥事を招いたことに対して、心からのおわびと会社側の責任を表明する「公式の場」である。その認識に欠けているため、このような言葉が不用意に出てしまうのだ。

この直前の...

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2020年も残すことあと僅か。この1年はまさにコロナ一色となってしまいました。一方、急速なオンライン化から働き方改革が進んだ、との声も。そんな中、発生した企業の危機を最小限に抑えるため、危機の状況とその対策を広く伝える広報業務の一丁目一番地「危機管理広報」は、コロナ下でどのように変化したのでしょうか。2020年に発覚した不祥事とその問題点を洗い出し、2021年の対策につなげていきたいと思います。