進化する広報のこれから

自社が何を言いたいかではなく記者が何を書きたいかを懸命に考える

  • 長沼史宏(アステリア)

広報担当者を本質的に育てるのは、メディアとの直の応酬にほかなりません。かつて私が、地方の企業にいながら、どのようにその経験を豊富に積んだのかをご紹介します。

私が、不意なことから広報担当に着任したのも今から20年前。社会人4年目の夏に初の転職を試みることに。そのときの最終面接で「広報に興味ないかな」と人事部長から聞かれました。広報という仕事を全く分かっていなかったのに、断ったら落とされると思い、「はい、あります!」と言ってしまいました。その結果、人事労務の業務経験しかない私が広報担当に着任したのが、2004年12月のことです。

この当時、広報はマイナーな仕事でした。同僚からも「何をしている部署?」と聞かれる状況。また、2000年代初めは、時代の寵児ちょうじと呼ばれた社長のIT企業で、女性の広報担当が注目を集めていました。その影響で、広報はキラキラした若い女性の仕事だと、偏ったイメージや誤解が広がっていました。

素人同然で広報の世界へ

私が中途入社したのは、長野県にある産業用ロボットやモーターの開発・製造会社です。東証一部に上場する実直な地方企業でしたが、メディア露出の多い経営者に買収された直後で、刷新された経営陣により会社の立て直しが進められ、広報機能の強化も進行中でした。

そんなタイミングで、広報未経験の私が入社したので、困難の連続です。ほぼ毎日、新聞やテレビ局の取材が入っていたのですが、自分には広報が向いていないと落ち込むことばかり。もともと物事を明確に、はっきりと説明することが苦手。気弱な性格もあり、記者さんから...

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この記事が含まれる特集

進化する広報のこれから

2025年4月、おかげさまで『広報会議』は創刊20周年を迎えました。この20年で、広報の手法や領域は大きく進化しています。ソーシャルメディアの浸透、SDGsへの関心の高まり、コロナ禍対応など、時代に応じて変化する要素がある一方で、対話を通じて信頼関係を構築していく広報の本質は変わりません。本特集では、広報の実務家や専門家が、その極意や心得を語っています。広報とは何かを改めて問い直し、社会や組織に求められる広報のあり方を考えるヒントとしてください。