「戦略的社内広報」で社員が変わり、会社が変わる。

134人の「マイスター」を輩出した 八重洲地下街の社内検定制度とは?

訪日観光客も増加傾向にある、東京駅のショッピングモール「八重洲地下街」。50周年を迎え、各店の従業員のおもてなし力や評判を高めるために、180店舗を巻き込んだ「ヤエチカマイスター」制度をスタートさせた。

1日約3000本の列車が発着する、日本最大の交通の要所、東京駅。この地下に位置し、飲食店など約180店舗が軒を連ねるのが「八重洲地下街」、通称「ヤエチカ」だ。近隣で勤務するビジネスパーソンを中心に、最近では海外からの観光客やファミリー層の来訪も増え、1日に約15万人が訪れている。館内勤務者数は約2500人で、その内訳は各店舗の従業員や駐車場の管理スタッフ、警備員、清掃員などだ。

ヤエチカでは2015年に設立50周年を迎え、社内外の広報活動を担う営業推進グループで新たなインナーブランディング活動を展開してきた。背景には「勤務する店舗やその周辺の知識だけでなく、地下街全体に意識を向けていきたい」という課題があった。同時に、ヤエチカというショッピングモール自体の評判を高めたいという思いもある。

「例えば、自身が働く店舗に近いロッカーの場所や出入口は答えられても、店舗から離れた場所について問われると答えられないというケースもある。ヤエチカで働く全スタッフが周辺環境や歴史に関する知識をもっと増やしていけば、モール全体でおもてなし力も向上します。何より、個々人が『ヤエチカで働いている』という自信とプライドを持つことにもつながります」とテナント営業部営業推進グループの斎藤忠氏は語る。

難色示す店長を説得するまで

そこで2015年6月、ある取り組みがスタートする。ヤエチカで働く上での基本的な業務知識やフロア情報、販促情報や近隣施設の情報などをテスト形式で問う「ヤエチカチャレンジ」だ。合格者は「ヤエチカマイスター」として認定し、伝道師として魅力をPRしてもらう。6月の店長会で趣旨を説明し、理解と参加を呼びかけた。さらに、店舗スタッフ用には、漫画を用いてチャレンジの狙いや概要を説明するリーフレットも作成し、配布した。

とはいえ当初は「チャレンジへの参加がスタッフの負担を増やすことになるのでは」と難色を示す店長も少なくなかった。そこで、より参加のメリットを明確に提示していった。「参加することでスタッフのおもてなし力が上がり、店舗のイメージが向上、ひいては売上アップにもつながるという狙いを丁寧に説明しました。さらに、店長だけでなく、エリアマネージャーや営業担当者にも資料を送付し、協力してもらえるよう呼びかけました」。

7月には、テストの出題範囲を綴った学習用のガイドブックを配布。スタッフが実際に勉強する風景を動画にまとめ …

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「戦略的社内広報」で社員が変わり、会社が変わる。

従業員を対象としたインナーコミュニケーションを重視する企業が増えてきました。ある機関の調査によれば、広報活動における重要なステークホルダーとして「従業員とその家族」のスコアが上昇しているという結果も出ています

一方で、日本企業は海外に比べ、社員個人の職場への愛着や働きがい、組織への帰属意識という点では温度差があるという現実も。

社内広報の活動が生産性の向上に寄与しているかという点も検証が必要です。広報関連部門が今目指すべきは、トップをはじめ経営企画や人事など、他部門と手を携え、企業の改革に寄与する戦略部隊です。

今号では、この「戦略的社内広報」を実現するためのヒントをお届けします。

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