「ネット直販とリテールの融合 ~顧客ロイヤリティの最先端~」
2012年12月6日に開催されました第六回ロイヤリティ・マーケティング研究会の概要について、
ご報告させていただきます。
発表者 | 横山 桂子 氏 (西日本電信電話株式会社 マーケティング部 IPサービス部門 CRM推進担当 担当部長) |
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内容 | ブロードバンドの普及の状況をはじめとして、NTT西日本を取り巻く環境、WEB起点でのコミュニケーションサイクルへの取り組みから今後の展望についてお話しいただきました。 |
発表者 | 奥谷 孝司 氏(株式会社良品計画 WEB事業部長) |
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内容 |
についてお話しいただきました。 |
青山学院大学 経営学部 マーケティング学科教授 小野 譲司 氏の総括から
今回は、西日本電信電話(NTT西日本)と良品計画の事例をご発表いただきました。
NTT西日本(敬称略)は、電話や通信回線の既存アカウントをいかに維持するかというCRMの根本的な課題に対してどのような施策を講じられてきたかという経緯と現状の
お話であり、良品計画はとくに同社のウェブ戦略が、サイト単体でで収益を上げるだけでなく、いかにオンラインからオフライン(店舗)へ顧客を誘導するシナジー効果を発揮する仕組み
として取り組みが行われてきたかについての最先端の事例を交えてのお話でした。
ここで両社を単純に比較してあれこれ議論するのは乱暴だと思いますが、あえて言うならば、それぞれの取引形態からくるロイヤリティ・マーケティングへの取り組み方の違いには
留意しておいても良いかと思います。
通信や電話は、ユーザーが契約後、一定期間もしくは半ば永久に顧客であり続け、継続して使うビジネスであり、これには通信のほか、電力、ガス、水道をはじめとした生活インフラのサービス、生命保険や損害保険、銀行、クレジットカード、英会話教室、フィットネスクラブなども該当します。
有償か無償かを問わなければ、ユーザー登録を行うオンラインサービスも似ています。
ややあらっぽく言えば、契約は最初だけであとは利用をいかに促進し、解約を防ぐかが勝負のビジネスです。
一方、無印良品をはじめとした小売業の多くは、消費者に広告や販促といった刺激を与え続けながら、つねに来店を促し、しかもそれを何度も繰り返し行っていくビジネスです。小売や飲食をはじめとした多くのサービス業、そして消費財メーカーもこれに該当します。お客様が来店する度に、売買契約をしてもらうにはどうすれば、を一回毎の取引をどれだけ促進し続けられるかを考えるビジネスです。
こうした取引形態を考えると、離脱防止型のロイヤリティ・マーケティングと、継続的な来店促進型のそれとでは、捕られる施策や期待される効果にも違いが出てくるのかと思います。
そもそも、わたしたちの日常生活を考えた場合、電話や通信回線といったサービスは、NTT西日本のサービスに満足したり、ブランド価値が上がったからと言って、すぐに通話量が
増えたり、より多くの時間をインターネットを使ったりするわけではなく、ロイヤリティの成果がすぐには見えにくいけれども、徐々に効いてくるという性格が強そうです。
それに対して、小売業はロイヤリティが高まることによって、来店頻度、来店間隔、買上点数、関連購買、そして客単価といった成果へのリターンが見えやすいという性格が強そうです。
こういった違いもあるので、ユーザーのロイヤリティを向上する施策も、単純に先端的な取り組み事例をいちはやく模倣してくれば良いというものでないことは、改めて確認して
おきたいところです。
今年度3回の研究会では、そもそもロイヤルカスタマーとは何かという話題が、図らずも毎回出てきました。それは、ヘビーユーザー=ファンとは限らないという認識に立つことから始まります。
たくさん買ってくれる、継続的に来店してくれる、客単価が高い、といった購買履歴でみた指標だけでは両者は識別しずらいかもしれません。しかしながら、ユーザーの中には、多かれ少なかれ、商品・サービスのコンセプトや価値、ブランドや企業の理念にまで惚れ込んで下さっているファンあるいはコア顧客がいるはずで、そうしたファンをどれくらい増やせるかが、
ロイヤリティ・マーケティングのもう一つの課題です。例えば、MUJIネットで、無印良品の商品を使った経験を書き込んでくれる多くのMUJIファンは、同社のフェイスブックで「いいね」ボタンを押すファンでもあり、たんに買い物客という経済的取引の関係だけでなく、ときには商品の使い勝手の悪さや改善点を提案し、ときには話題を広めてくれる存在でもあります。
一つの論点として、こうしたユーザーのロイヤリティを超えた、エンゲージメント行動が、企業にどのような収益というリターンをもたらすかという議論があります。平たく言えば、「いいね」はお金を生み出すのかということです。そもそもソーシャルメディアから収益を期待するべきではなく、別次元で考えるべきだといった、さまざまな意見がありそうです。そうした中で、ソーシャルメディアを活用したCRMの最先端事例の一つとして脚光を浴びている良品計画の取り組みは、購入の検討から使用・消費に至るまでの「顧客時間」 をいかに増やし充実させるかという考え方に基づいて、事業戦略におけるウェブ事業の役割をしっかり定義したうえで、オンラインから店舗への送客の施策やそのKPIを設定した マネジメントのサイクルを構築している点が印象的でした。
2012年度、3回にわたるロイヤリティ・マーケティング研究会では、CRMに関する各種の先端的な取り組みのご紹介に留まらず、CRMそのものを少し高い位置から見直すような視点や問題提起がたくさんなされたと思います。すなわち、ブランド構築とCRM、従業員とCRM、オンラインとオフラインのシナジー、クローズドな顧客囲い込みからオープンな顧客戦略、ロイヤリティからエンゲージメント、ツーサイド・プラットフォーム・ビジネスにおけるCRM、そして、そもそもロイヤルカスタマーとは何かといったものです。
テクノロジーや市場環境が変われば、当然、CRMの論点も変わってくるはずですが、戦術レベルの施策の活用や短期的成果だけでなく、戦略レベルの視点からそれらを見据えた
取り組みの重要性といったものが、この研究会のなかで、各社の事例のご紹介や質疑・議論のなかで共有できたと思います。2月のセミナーは、こうした点をふまえつつ、
よりオープンな場でCRMの今後について考える機会になればと楽しみにしています。
マーケティング本部 部長
藤井 伸一郎 様
マーケティング本部 顧客戦略部 部長
岡嶋 正幸 様
マーケティング本部 顧客戦略部 マネージャー
山田 徹志 様
マーケティング部IPサービス部門CRM推進担当 担当部長
横山 桂子 様
広報室 宣伝担当課長
篠原 聡 様
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主催:ロイヤリティ・マーケティング研究会事務局
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