コンテストの審査は、
アートディレクター秋山具義さん(デイリーフレッシュ)、クリエイティブディレクター小西利行さん(プール)、
そしてトヨタレンタリース栃木・代表取締役専務 新井将能
さんの3名で行いました。


秋山具義さん
小西利行さん
新井将能さん




受賞作品について、どんな点を評価されたのか、教えてください。まずはグランプリ「贅沢な靴」から。
秋山 レンタカーを利用する50~60代が、旅行しながらリッチな気分で車を借りられるのではないかと思いますね。
夫婦旅行で「贅沢な靴」プランを利用したら、夫婦間のコミュニケーションも良くなるのでは。
小西 レンタカーを借りることが、すごく贅沢なことに思える企画なのがいいですね。
レンタカーの価値をバーンと引き上げた企画だという気がします。実現するなら旅行会社が組むことになるでしょうね。
レンタカーという言葉を使わずにネーミングしたのもいい。カーと書いてあれば旅行会社は組みにくくなりますから。
「贅沢な靴」というひとつのブランドにレンタカー会社や旅行会社、レストランなども入って大きな流れになれば、いろんなところが活性化しそうです。
新井 レンタカーで、これまでにないブランドが作れる、可能性を感じる企画です。

読み込まないとわからないサービスは、
世の中にも伝わっていかないものです。

審査員特別賞の4作品についても教えてください。
新井 「レインタカー」はネーミングがいい。手軽に始められそうですし、使う側もイメージしやすい。
小西 世の中の人たちが、パッと理解できる言葉にすることは大事。雨の日に割引をしましょうと企画書にあっても、「まあそうだよね」としか思わないけれど、「レインタカーという名称でやりましょう」と言われた瞬間に現実味が出てきます。
秋山 旅先で雨が降っていても、楽しい気分になれる感じがしました。
小西 駅や飛行場に到着して、雨が降っていたら間違いなく気分が沈みますよね。でもレインタカーがあるなら、「安くなるしいいんじゃないの」と、なる。サービス内容をくどくど説明するより、レインタカーマークがあるといいかもしれません。

小西 「ドリームジャンボレンタカー」は、見た瞬間に「借りたら当たる」企画だと理解できます。読み込まないとわからないサービスは、世の中にも伝わっていかないものです。
秋山 乗っている車がワクワクするものになるのは楽しい。「この店で借りよう」という理由づけにもなります。こんな特典をつけてくれる店は、いい店、という感じがしますよね。
新井 車業界のキャンペーンでは、車のナンバーが使われていそうで、実は使われてない。発想も斬新ですね。

小西 「いきなりクラウン。」は、ある程度の年齢以上の人なら誰でも知っているコピー「いつかはクラウン」のパロディですけれど、嫌な感じがしません。
新井 レンタカーなら高級車も簡単に乗ることができる、という考え方はこれまでもありましたけれど、それが短いフレーズで、シンプルに伝わっている。見た瞬間、笑ってしまいました。
小西 応募した人も書いた後、ちょっと笑ったと思う。
秋山 車名が入ってこれだけ短くスパッといったというのがいい。「なんとかヴィッツ」とかシリーズ化もできそうです。

それが短いフレーズで、シンプルに伝わっている。
見た瞬間、笑ってしまいました。

惜しくも受賞はなりませんでしたが、審査の最終まで残ったファイナリストについても教えてください。
秋山 「パパドラ」のサービスで、子どもの誕生日に、お父さんがキャラクターの車を借りてきてくれたら、子どもは本当に喜ぶと思います。実際、キャラクターの車を店に置くとしたら台数は少なくなると思いますが、その存在自体が希少価値を生めば、「すみません1か月待ちなんです」という対応になってもいいと思う。
小西 レンタカーは普通、必要だから乗るものだけれど、「パパドラ」は新しい家族のコミュニケーションを生みだす、という一歩踏み込んでだ発想をしていただけに、ネーミングが惜しい。

秋山 車を買おうと思ったら、「今日のラッキーカラーで選ぼう」のような、選び方はできませんよね。今日は黄色を借りる、と決めて、それに合わせた洋服を着るのも面白いのでは。同じ考え方の作品もありましたが、言葉としてシャーブだったので選びました。
新井 現状、レンタカーの車の色は、白やシルバーが多く、カラーバリエーションがある車種は少ないのですが、ユーザーは、色に対するこだわりもありますから、カラーを揃えたほうがいいという提案には可能性を感じました。

小西 パクリがいいと思わないでほしいのですが、「ネットで借りて、自宅に届き、自宅で返却。」という作品は、レンタカーの未来を考えるコンテストだからあえて選びました。レンタカーを利用すると、旅行のときは空港などで返却できるからいいとしても、身近な場所で利用するときは、自分が借りに行かなくてはいけないし、返しに行かないといけない。自宅で返却できれば、身近な利用を促進できます。「ネットで借りて、自宅に届き、自宅で返却。」と新聞に書いてあって、その下に「レンタカー」と入っていたら、「新しい」と感じると思います。レンタルDVDと同じような手軽さが想像できました。

小西 「どうしても御社に入りたかったので、御社の車にはすべて乗ってみました。」のコピーは、審査員みんなで笑いました。
秋山 こういう人が面接に来て、各車に乗った車の写真を見せられたら、「やるな」と思いますよね。
小西 トヨタグループに入社する、もしくは目指している人が全員レンタカーに乗れば、利用促進になるかもしれません。

秋山 写真を写真集にして届けてくれるサービスは利用すると楽しいですが、結構手間もかかります。「GPSによる位置情報を活用し、旅行サイトや旅行アルバムを記念に作ってもらう。」の企画では、車でどこに行ったかを記録してくれて、写真も構成してくれる。これは便利です。
小西 アーカイブできるところに意味がありますね。独占的にトヨタレンタカーで実施するというのならいいかもしれません。

秋山 レンタカーの「有休割」は、平日でのレジャー利用が増える企画ですね。ネーミングが固かったけれど。
小西 積極的に有給の消化しようというモチベーションにはなりそうです。小旅行を促すきっかけにもなりそうです。いろんな割引企画がある中で、いいアイデアでした。

秋山 「納車日のワクワク感を、手軽に。」のコピーは、気持ちはわかりますね。
小西 新しい車を買うときでも、レンタカーでも、新しい車にのるときは、ドキドキします。「納車日」という言葉があると、あの時の気持ちか、と前向きになれます。ただ、レンタカーを借りよう積極的なモチベーションにはなりにくいので、そこがちょっと気になりました。

身の回りにあるものや、他の業界にあるものを
うまく組み合わせると、新しい企画がでてくる。

審査全体を通して感じたことを教えてください。
新井 企画書の一次審査では、カーシェアリングなどレンタカービジネスとしてすでに存在するアイデアや、クルマそのものに対する提案は落選の基準にしました。審査で残った企画は、一見するとレンタカー色は強くない。でも既存のレンタカーとは異なるイメージがうまく出せています。レンタカーという枠の中だけで考えると限られたアイデアしか出てきませんが、身の回りにあるものや、他の業界にあるものをうまく組み合わせると、新しい企画がでてくるのだとあらためて感じましたね。
小西 コピー作品は、レンタカーを描写したり、面白く書こうとしたりするものは多くありました。でも今回は新しいレンタカーの利用アイデアを出すコンテストなので、アイデア自体がコピーになっていないと企画書作品に負けてしまう。背景に「こんな企画がついている感じがするな」と想像が広がるコピー作品が残りましたね。逆に企画書作品で、いいネーミングや、キャッチフレーズを書いた人が最終的に選ばれました。発想が面白いならどんな言葉なら世の中に広がっていくのかまで煮詰めてほしいと思いました。

アイデア自体がコピーになっていないと
企画書作品に負けてしまう。

コンテストを通じ、「レンタカーの未来」についてどのような印象を持ちましたか。
秋山 見ていて新鮮だった作品は、レンタカービジネスの外にあるアイデアをプラスしたものは見ていて新鮮だった。DVDを家で借りるように、家にいながら車が借りられたり、宝くじのような当たる楽しみがあったり。また、いいアイデアは、口の端に上りやすいんです。「どうせ借りるならドリームジャンボレンタカーにしない?」とか、初老の男性が奥さんに「今度の誕生日は、贅沢な靴でいこうと思う」と言ったりするのは素敵です。こうなれば、車を借りなくてはいけないから借りるのではなく、ワクワクしながらレンタカーを使いたくなるのでは。
新井 業界内でレンタカーの利用促進を考えると、価格をどうしよう、車種をどうしよう、という軸でとどまってしまいがちです。高級感を出したいなら高級な車を貸し出せばいい、という発想。でも、あくまで利用者の視点で、どういうシーンで車を使うのがぜいたくなのか、を考えれば、実は車種は何でも良かったりする。
小西 グランプリ作品「贅沢な靴」のように、朝起きてスポーツカーが宿に届く、ということが、いかに贅沢なことか。これはレンタカービジネスだからできる表現です。車を販売するビジネスではできません。
秋山 いい企画はCMの映像が浮かんできます。「贅沢な靴」のストーリーを、ショートドラマにして、トヨタレンタリース提供で放送したら面白そうですね。

レンタカービジネスの外にあるアイデアを
プラスしたものは見ていて新鮮だった。