コミュニケーションが生まれる空間 Vol.30 豊嶋 秀樹氏

Creator File

  • センターラインアソシエイツ 松井るみ氏
  • トランジットジェネラルオフィス 岡田光氏
  • BOOK APART運営者 三田修平氏
  • 極地建築家 村上祐資氏
  • ツクルバ 中村真広氏/村上浩輝氏
  • 木村 英智氏
  • 豊嶋 秀樹氏
  • 木村 英智氏
  • SOLSO代表 齊藤 太一氏
  • 構造エンジニア 金田 充弘氏
  • スペースコンポーザー 谷川 じゅんじ氏
  • トラフ建築設計事務所
バックナンバー
  • 中目黒マドレーヌ店主 田中 真治氏
  • フラワーアーティスト CHAJIN氏
  • AuthaGraph代表 鳴川 肇氏
  • 昼寝城 店主 寒川 一氏
  • ランドスケーププロダクツ代表 中原 慎一郎氏
  • スタンダードトレード代表 渡邊 謙一郎氏
  • ブック・コーディネイター 内沼 晋太郎氏
  • 建築家 谷尻 誠氏
  • 茶人 木村 宗慎氏
  • 建築照明デザイナー 矢野 大輔氏
  • 音響演出家 高橋 琢哉氏
  • 一級建築士 中村 拓志氏
  • 建築家 加藤 匡毅氏
  • デザインチーム KEIKO+MANABU
  • 建築設計プロデューサー 小野 啓司氏
  • インテリア・エクステリアデザイナー 佐野 岳士氏
  • 建築家 木下 昌大氏
  • 建築家 猪熊 純氏
  • 大学教授 手塚 貴晴氏
  • 建築家 二俣 公一氏
  • 建築家 梅村 典孝氏
  • 建築家 長岡 勉氏
  • 建築家 平田 晃久氏
  • 建築家 迫 慶一郎氏
豊嶋 秀樹氏 豊嶋 秀樹氏

1971 年大阪生まれ。91 年サンフランシスコ・アート・インスティチュート卒業。 01年チェルシー・カレッジ・オブ・アート・デザイン修了。graf の設立メンバーの一人で、09年9月以降はgm projectsとして活動開始。最近では「押忍!手芸部と豊嶋秀樹」として金沢21世紀美術館で個展などのコラボレーション、「マンガ新次元」展では空間構成を担当。「岩木遠足」や「森をひらくこと、T.O.D.A.」ではディレクターを担当している。2013年より福岡市在住。

Presented by YKKap

目的のない空間を生み出す

 展覧会や店舗、イベントスペースなど、さまざまな空間づくりに携わる中で常々思っているのは「目的設定をせずにつくる」ことが、僕にとっては重要だということです。

 そもそも僕が空間づくりに仕事として関わるようになったのは、大阪でデザイン活動などを行うgrafを立ち上げた後、graf media gmという名で空間運営を始めてからです。これは空間自体をメディアにして、アートやデザインの展示から音楽イベントなどを行う場なんですね。だから最初から、特定の目的に特化した場ではなくて、そこに関わる人によって変化する場をつくることが、僕にとっては大切なんだと思います。

 もうひとつ重要なのは「ここにいるメンバーで何かをやる」ことです。grafも何かひとつの目的があってメンバーが集まったわけではなくて、先に飲み仲間というか、友達のような関係でメンバーがいた。それで「このメンバーで何かできるんじゃないか」と思って始まったんです。

 それで皆が集まる秘密基地のような場が欲しいよねという話になって場所を借りたんですが、オープンするまでの数カ月は、夜な夜な皆で集まって、空間づくりをやっていた。そのとき、例えば「僕は室内のデザインをやるよ」とか、「まかないをつくるよ」とか、それぞれができることをやっていた。こういう空間にしようという目的があって、作業を分担してやるのとは逆で、メンバーそれぞれができることをやり、その総体として空間ができあがったんです。

場の意味を皆で考える

 昨年秋には栃木県の那須塩原で「森をひらくこと、 T.O.D.A」というプロジェクトがオープンしました。森のオーナーである戸田香代子さんと、あるアートプロジェクトで知り合ったとき「この森をひらかれたものにして、活性化させたい」という話を聞きました。そこで僕が考えたのは、何か一つのイベントや場をつくることで「森をひらく」ことを達成するのではなく、ここを「森をひらく」ということを皆で考える場にしようということです。

 いまはイベントなど多目的に使用できるOPEN PLACEと、飲食できるKITCHEN PLACEがあります。春には美術作家 佐々木愛さんの作品展示やワークショップを開催したり、秋には写真家 津田直さんの写真展も予定しています。いろんな人が関わり、関わる人によって場所の意味や目的が変化する。そうして皆で森のあり方を考えていけたらいいと思います。

 いま新たに宿泊できるNEST PLACEをつくっているのですが、そこではあえて水道をつけないでおこうかというアイデアもあります。ここには井戸があるので、井戸へ水を汲みに行って、使ってもらう。つまり完結した場としてつくるのではなくて、そうやって森に能動的にかかわってもらうことで、場として成立するようにしたいなと思うんです。

 僕がつくる空間は、建築物をつくることとは逆なのかもしれません。通常の建築はまずゴールである設計図を描き、そこから逆算してつくっていきます。でも僕はスタート地点から始めて行き着いたところをゴールと考えます。なんとなく方向性は見えているけど、どうなるかは自分でもわからない。もしそれで思っていたのと違う場所にたどり着いても、それはそれでいいなと思うんです。

「ブレーン」2013年10月号より

「ブレーン」のサイトはこちらから

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森をひらくこと、T.O.D.A「OPEN PLACE」

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森をひらくこと、T.O.D.A「KITCHEN PLACE」

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OPEN PLACEでは展覧会やワークショップなど、さまざまなイベントが開催される。

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