(なかむらまさひろ・むらかみひろき)
ツクルバは「場の発明」をミッションに掲げ、空間プロデュースにおける【企画】【設計】【運営】のステップに一貫して関わることで、軸のある「場所づくり」を実現する発明家集団。立教大学社会学部産業関係学科(現・経営学部)卒業の村上浩輝(右)、東京工業大学大学院建築学専攻修了の中村真広(左)が11年8月に共同創業。
シェアードワークプレイス「co-ba(コーバ)」を運営しているツクルバは11年8月、経営学を学んでいた村上浩輝さんと空間デザイナーの中村真広さんによって設立された。渋谷駅から徒歩数分のビル5階に、会員専用スペースco-baが、6階にはシェアライブラリーco-ba Libraryがある。
入り口に受付はなく、会員に交じってツクルバの2人も、フロアに置かれた大きな長机について仕事をしている。「会員皆にこのコミュニティに所属している市民意識を持ってもらいたいし、僕たちも場を提供する人間というよりは、クラスの学級委員のような立ち位置でコミュニティに属しています」。それによってコミュニティが自然と成長し、その成長に合わせて添え木を当ててあげることがツクルバの役割だと中村さん。村上さんは「ITやデザインなど、いろんな分野の人が混ざり合うことで、何か面白いものが生まれる。co-baは、そんなコミュニケーションを誘発するような場にしたいと思っています」と続ける。
もともと大学卒業後、不動産デベロッパーの会社に入社し、村上さんと中村さんは知り合った。その後フリーランスでデザイナーとして働くようになった中村さんが、「クリエイターのためのシェアオフィスがあったらいいのに」と考え、つくられたのがツクルバであり、co-baだった。
当時のシェアオフィスは、まだ一人ひとりの空間がパーテーションで仕切られた、「作業場」のような空間が一般的。しかし2人が目指したのは「予想もしなかったつながり」を生む空間だ。
「co-ba開設に先立ち、コワーキングスペースの発祥の地でもあるサンフランシスコに視察にも行きました。そこで見た、入居者同士が気軽に話し合える空間がヒントでした」と中村さんは話す。しかしアメリカとは異なり、日本では互いに遠慮し合い交流が生まれにくい。
そのためにハード面、ソフト面の両方でコミュニケーションを生む仕掛けをつくっている。月に1度会員同士の交流会を開くことから始まり、昨年5月には6階に新たにco-ba Libraryを開設。会員ひとりにつき1枠の棚を所有しており、各自が自由に棚を構成し、それぞれの趣味嗜好がわかる仕組みだ。
さらに6階スペースでは音楽イベントやトークセッション、さらには「場づくり」について考える「B SCHOOL」といったイベントも開催され、会員のみならず地域を巻き込んだコミュニティづくりが試みられている。「外からいろんな人がやってきたり、会員が友達に紹介したりすることによって、コミュニティ自体が循環し、自立していきます」と村上さん。いまでは会員が企画して交流会を行うこともあるという。
そんなco-baの次なる目標は、渋谷以外の土地への展開だ。東京の地方都市や地域の都市部へ設立し、それぞれが連携した仕組みを生み出していきたいと、中村さんは話す。「渋谷では三次産業に従事する人が多いですが、地方では一次産業の人も出てくるかもしれない。例えば地方のco-baでものづくりをしている人がECサイトをつくって直販をしたいと考えたとき、渋谷にいる会員がサイトづくりを手伝い、交流が生まれる。そんなネットワークができるといいなと考えています」。
「ブレーン」2013年12月号より